【3月27日(金曜日)】
パリで久しぶりの快晴。到着後はほとんどの日が雨であった。今日の夕方5時に日本へ戻るので多少時間はある。凱旋門に行ったことがなかったので、そこへ向かう。シャンゼリゼ通りも警備が厳しい。スーパーのMonoprixでBonne Mamanのお菓子を土産に買い、アパートに14時まで荷物を置かせてもらっていたので、それのパッキング。空港へ向かう前にフランスパンのサンドイッチを買いシャルルドゴール空港へ向かう。
飛行機の隣の席に70歳くらいだろうか、男性とその家族が座っていた。ミュンヘンに住んでいる日本人で、子ども2人は孫であった。今回、初めて日本へ孫を連れていくのでかなりご機嫌で一緒にビールとワインを飲みながら盛り上がる。もともと音響メーカーに勤めていてステレオ製品をヨーロッパで売り歩いていたそうだ。留学していたことを話すと、留学して英語を学ぶことが本当に必要なのだろうか、語学を学ぶことより、まずはするべきことがあってそれに語学が付随して必要になってくる。ただ語学だけ海外で勉強しているのはあまり賛同できない。自分達は海外で製品を売るという環境で英語もドイツ語も現場で覚えるしかなかったということだった。
自分もその通りだと思う。では何故、留学をして英語を覚えるのだろうか。それは初めはほんの海外旅行のつもりだけだった。レストランのメニュー表を読んだりコンサートのチケットを買えればいいだけだったのだが、いつの間にか英語でなければ意思の疎通ができない人達が回りに増えてしまったからなのだ。今回の2週間の滞在でいったい何人の人と出会い話をしただろう。詐欺師から学生や子供、仕事づくめのロンドンの中心地に住む夫婦、日本人やヨーロピアンの学生達、レストランの給仕。それらの人達は旅に出る度に、自分にもう一度考えさせられる何かを与えてくれ、いつも再出発できる新しい気持ちにしてくれる。物価や値段のことをこと細かく書いてみたが、終わってみればそんな金額などどうでもいいと思うくらい、旅から得られる見返りは大きい。そして人が成長するということは、こういったことなのだと思う。
初めて行った海外は友人と一緒に行ったグアム旅行だった。飛行機を降りた時に感じた海外独特の匂いは今も変わらない。そんな友人達と行ったパック旅行がいつの間にかただの観光旅行とは少し違う海外滞在へと変わっていった。少しづつだが自分も変わっていったのだと思う。日本人の悩みなど、海外で生活する人達の問題に比べると、まったく桁違いに小さいものなのだ。初めの頃の自分の持っていた価値観と今の価値観では全くといっていいほど違う。今、世界を見渡すと物で溢れている国とそうでない国がある。旅に出て、そういう違った国々を回ると本当に必要なものは何か、大切なものは何かということに少しづつ気付いたような気がする。この、実際に世界で見たり聞いたりするということは、テレビやインターネットではなく、自分の目で時代そのものを直視するということでもあるのだ。
近年では日本人は海外に出ることが少なくなったと言われている。だがこの1,2年くらいで、昨年訪れた東南アジアのフィリピン、セブ島では日本人の語学留学生が増え、学校内では熱気が感じられた。海外では誰も助けてくれずトラブルにあることもあるが、それ以上に助けてくれる人もいる。今回の移動中も色々な場所で知り合った友人達から色々な情報を書いたメッセージを頂いた。欧米諸国と東南アジア、第3世界と呼ばれる発展途上国などを見てきた彼らは語学とともに国際感覚を養っている。東南アジアの発展する速度は早い。数年後、東南アジアが世界の中心になるような気にさえなってしまう。日本の景気後退が叫ばれて久しいが、今後を担う日本人達は国内では見かけることができない場所で次の時代へ向けての道筋を探しており、人生を本気で楽しんでいる。そこにこれからの日本人の可能性があるように思う。