九州一周六日目、福岡県門司港、博多

別府のホテルで朝の温泉に浸かり、そこから高速道路で1時間強走り、福岡の門司港に到着。門司港は海の眺めは良いし、明治大正時代に建てられた洋館が立ち並び雰囲気がいい。そしてまたもや晴天だった。九州の雨の景色が全く思い浮かばない。こんな晴れの日に港で海を眺めていると脳の中は空っぽになっていってしまう。九州に来てから一日一日経つうちに悪い考えなどが頭の中から消えていっている。昼に日光を浴び海を眺め、夜は温泉に浸かり、九州の酒のつまみを食べながら酔いが回り、半分二日酔いで起き上がってまた移動する。自分の願望がなんだったのかがぼんやりしてしまう。いや、これからの自分の願望が何かなどを問いてもそんなものはあったのだろうか。ただ何か面白いことにぶち当たりたいということから過去も含めてこうして歩き回っていただけなのかもしれない。

と思った矢先に目の前からまんまビーパップハイスクール風のリーゼント2人組が歩いてきた。やはり面白いことにぶち当たった。赤いカーディガンにスラックスでビーパップハイスクールの週末ファッションのようだ。だが、なんでこんな格好の若者が歩いているのだと思ったら、周りにはリーゼントの男達が結構いた。北九州市というのはこういう文化なのだろうか。

門司港駅は人の往来が多くて建物の写真を撮る観光客が多かった。港を散策していると旧車の展示会をしていたりと、妙に人が多いと思ったらそうか週末なのだ、休日の感覚もなくなっている。門司港で有名な焼きカレーが美味い!と思ってる時間もあまり無かったのだけど、早々と食べてそのまま1時間高速を走って博多に向かいグランドハイアット福岡にチェックインした。ハイアットなんて旅行支援がなかったら泊まらないなと思いながらホテル内を徘徊する。部屋の中は今まで泊ったことがない充実した高級アメニティで笑ってしまう。バスルームにテレビがある客室なんで初めてだ。窓からの眺めはキャナルシティなのでショッピングモールしか見えないが、まぁそれでもここはまた泊まりたいくらい部屋のセンスがいい。そこでまたもクーポン券を3000円もらい初上陸の博多の街を散策する。

博多の街は歩くのに一苦労するくらい大きすぎて、駅周辺からひたすら散策する。人はというとかなりの人が歩いている。ほとんど東京と変わらないくらいのブランドショップがコンパクトに点在している。コムデギャルソンの博多店があったので入って試着なんかして店員と話しをして中州をぶらつく。中州の歓楽街はコロナの影響で客引きも客も警戒し合っているようで話に聞くほどそれほど盛り上がってはいなかった。

夕食はキャナルシティで水炊きを食べて(この夜の店がどの店も満席でなかなか入れなかったが入った店は空いててビールを飲みながらゆっくり水炊きをつついてた)、川沿いの屋台は雰囲気は良いがどこも行列なのでホテルに戻ってせっかくハイアットだからラウンジに行って飲んでたら、カクテルは美味いし客層も見てると面白い。中年の男女がビジネスの話をこんな博多のバブリーなところでしてるのだが、ビジネスの話なんだけどビジネス自慢の言い合いになっていて、どうでもいいけど熱気があってすごく雰囲気に合っていていい。

10月は下旬、シャツ一枚で歩ける気温も良いし、街中もホテル内もほろ酔いで歩けるこの季節の博多の夜は最高に気分が良い。

九州一周五日目 九重、湯布院、別府温泉

天気予報を見るとそろそろどこかで雨が降る予定なのだが、またも晴天。今日は移動が長いので助かる。というか日常生活でもこんなに毎日晴れること自体があんまりないんじゃないだろうか。自分の場合、何故か旅に出ると晴れの日が多い。ちなみに関東地方はこの間ずっと雨らしい。

黒川の温泉宿をチェックアウトして今日も一日ドライブになるような旅程なのだが、晴れているので山道を走っていて気分が良い。この山道が雨だとなかなかキツい運転になりそうなので運が良かった。車で走っている途中にビジターセンターという道の駅のような施設があったので朝の珈琲をテラス席で飲む。晴天で山に囲まれたところで朝一の珈琲を飲むということが気持ち良すぎて平和ボケしてきて、色々な日常のことがどうでも良くなってしまった。コロナだろうが不景気だろうが至福というものは単純に結局こういう珈琲を一杯飲むだけのところにあったりしてしまう。日常だと入ってくる情報が多すぎるのだが、ここにいると色々な情報が遮断しても良くなり気分が落ち着いてしまう。結局は遮断されてしまった方が幸せなのだろうか?もしかすると、ある期間はこういうことに時間を使わないと正常な精神を保てないのかもしれない。現在の普段の生活は仕事かインターネットに24時間どっぷり接続されていて頭が休む間もないとは言われるけど、こういう機会にそれがよく分かる。日常の身近な生活にもこういった距離感をどう取り入れようか。自分なりに考えたのは人と会って話をしているだけでも変わるが、一人の時間に何をするか。たとえば楽器の練習、この文章を書く作業、特に楽器はいいと思う。演奏に集中できるので精神安定剤になるはずだ。

そしてこの後、向かった先が九重夢吊り橋という大きな吊り橋で、まぁ、ただの吊り橋なので家族連れの観光客を眺めながら長閑さを感じるだけで湯布院へ移動する。湯布院に到着するとそこは混んでいて金鱗湖はすでに紅葉で近くから中国語が聞こえてくる。

湖周りを少し散策して湯布院を出てまた山道を走り別府に到着する。湯布院にあった蕎麦屋は混んでるし値段は高いしで昼食を食べていなかったので、調べた有名な胡月という冷麺の店に行く。麺は硬めの太麺でほんの少し酸っぱいキムチの乗った冷麺でこんな夏日にちょうど良い。

海岸へ向かい浜辺を少し歩く。今回、海に行く旅程がほとんどないので来てみたが、やはり海は見ているだけで気持ちが良い。別府の観光地は地獄温泉なのでホテルのチェックインの前に行ってみることにする。海地獄が有名なのでそこへ行ってみると、硫黄の匂いがして売店の土産売り場が鬼グッズだらけ、地獄キャップ、地獄Tシャツ、ふざけている。なんだか電気グルーヴを思い出した。

海地獄自体も青い温泉でめちゃくちゃグツグツいっていて湯煙がものすごい、これもふざけている。何を楽しんでいいのか分からず微妙な感じでそこを後にした。

ホテルに着いてチェックインするのに並んでいると、目の前にカメラマンとリポーターらしき人。来そうだなと思ったら、やはり声をかけられ旅行支援クーポンを貰うところを撮影したいと言うのでOKした。テレビ大分の放送で使うそうだ。

動画で見つけたのがこれ。↓

顔も撮ったと言ってたのだが顔が映る瞬間、子供にカットが入れ替わった。大分に知り合いなんていないからどんどんとってもらって構わないのだが。部屋に行くと、今回の旅、いや、今までの旅に行ったホテルの中でも非常にレベルの低い、いや、古いからか、昭和の洋風旅館の部屋でびっくりした。今時こんな部屋があるなんて。こんな絵画、他では絶対飾ってない。ある意味貴重だ。

夕食まで時間があったので別府駅前を散策したのたが寂れている。寂れているけれど人は結構歩いているので、こういう日常が普通なのだろうか。まぁ、県庁でもないし。ホテルの温泉はなかなか良かったが、夕食はブッフェで週末だったからか家族連れで相当に混んでいた。料理はまぁ、見た目と量の多さで見させているだけで味はとくにと言うような物。適当に食べて呑んで部屋に戻る。別府は何だか少しシラケた一日で終わった。明日はここから北上して福岡県の門司港へ向かう。

九州一周四日目 熊本県 阿蘇山~黒川温泉

熊本市内の日航ホテルのそれらしい朝食をとり、今日も移動する。秋晴れの朝に少し時間があったのでホテル近辺を散策してみる。涼しくて散歩するにはちょうどいい。熊本市はなかなかの都会で鹿児島市内よりも建物が新しく作られているような街。地元の人はみな通勤時で急いで歩いているが、自分は満腹状態で路面電車を眺めていたら香港を思い出した。香港をぶらぶら歩いている時もこんな朝だった気がする。九州自体が中国に近いからだろうか、食事もそんな味付けのルーローハンが出たりする。

ホテルをチェックアウトして阿蘇山へ向かう。今夜は黒川温泉に泊まるので、阿蘇山のドライブコースを車を走らせる。今日もしつこく晴天で全く雨が降らない。毎日移動していると国内移動でもだんだん海外での移動旅の気持ちにもなってくる。何も考えずただ移動していくと日常の生活からだんだん遠く離れていき何かが覚醒して本来の自分が見えてくる。なので旅に出るなら長期間の方がいい。

ミルクロードというドライブコースはぐねぐねうねった道のりで、コーナーばかりの道路を車とバイクが飛ばしていく。スピードを出すドライブは性に合わないが結構好きなので一気に大観峰という景観の良い山々の見える場所に到着する。観光客も結構な数でみんな寛いでいる。空気も良くてしかも晴天、そんな山々に囲まれていると何もする気がしなくなってしまい、兎に角気持ちがいい。そこからまた車で阿蘇神社まで向かう。阿蘇神社は改装中だったのだが、昼に地元の名物の赤牛丼を食べる。半熟卵が載った赤身の牛丼でかなり美味い。九州に着いてから食べる肉がとにかくどれも美味い。店内は観光客でいっぱいだった。

黒川温泉の宿、南城苑には早めに到着したかったのでそのまま車を飛ばして15時頃にチェックイン。部屋は眺めの良い品の良い和室で一気に明治か江戸時代まで戻ってしまうような贅沢な空間。食事の時間は18時からと告げられどうもコース料理らしい。これはもしかするとと思ったらとんでもない格別のフルコースだった。宿は25000円くらいする自分には高級宿、ほかの宿は3,4万円くらいする温泉宿ばかりだった。はっきり言って高い。なのだが旅行支援生活をしているので結構な割引の適用になっている。こんな時でもないとなかなか泊まれない宿ではある。

浴衣に着替えて温泉街を散策してみる。川が流れてあちこちに温泉宿がありこじんまりした温泉街だった。ここはまた来てみたい場所になりそうだと思いながら宿の温泉に行ってみると、日本昔話に出てくるような眺めと白く濁った湯。外に小さな露天風呂のようなスペースがあり、そこから山や目の前の温泉宿が見える。しかも一人で入るような貸切風呂だ。立ち風呂なんていう露天風呂もあって立って入りながら景観を眺めることができる。考えたら宿泊客自体が10人いるかというくらいの人数なので非常にゆっくりと寛げてしまう。一人で来てしまったのだが、温泉に没頭できる初めての体験かもしれない。

夕食の時間になったので食堂へ行くと、コースのお品書きが置いてあり、結構な数のメニュー。一人で来ている客もいた。運ばれてくる料理は天ぷら、馬刺し、40分じっくり焼いたというヤマメ、茶碗蒸し、牛ロース、最後にご飯と味噌汁。スタッフが丁寧に説明してくれる。もはや料亭の味でこんな食事がついて25000円なんて無茶苦茶安い。結局また呑んでしまい酔っ払う。温泉宿の外はぐっと気温が下がり夜に外出する気はせず、部屋に戻ると敷布団が敷いてありそのまま寝てしまった。