九州一周の旅八日目3、大浦天主堂

怖いことに遭遇してしまった。まず怖いにも色々と種類があるけど、今回のは初めての類の怖い出来事だった。長崎には大浦天主堂という古いカトリック教会がある。作られたのは1865年。この教会がどういった経緯で作られたのかというと、当時の秀吉や家康が行っていたキリシタン弾圧で十字架に磔の刑にされた26人の殉教者に捧げられて作られたのだそうだ。中の写真は撮れないのだけど外階段を上がって教会の中に入ると信者席があり堂内はたくさんの窓にステンドグラスが使われている。正面には十字架のキリスト像が掲げられている。そんなカトリック教会の席に座っているだけで気持ちは落ち着いてしまい、なんだか海外の教会にでも行ったかのような感覚にもなる。教会を出ると博物館になっており、まず殉教者たちの磔の刑の絵があり、なんとも痛々しい絵であり、武士や当時の官僚に身体を押さえつけられ血生臭い状況になっている。その先には踏み絵やマリア象、十字架のキリスト、司祭の衣装など当時の物が展示されている。キリシタンの歴史年表の資料もあり、ほとんどが血を見る争いだったのだと言っているようなものだった。

そんなものを見た後に博物館を出て、日は暮れかかっていたが外の空気でも吸おうと歩いていくと小さい広場があった。そこには十字架のキリストが上に掲げられており、石板にはザビエルだろうか、人の絵が彫られている。それを見ようと近づいて行くと、前に一人の女性が立っていた。その時、その女性がこちらをぐるっと振り返った。瞬間、女性と目が合ったのだが、女性の口元を見ると口から顎にかけて真っ赤に染まっており、そこからは血がぼたぼたと滴っているのだ。十字架のキリスト像や宗教施設、殉教者の絵を見た後、しかも夕暮れ時に蒼くなった空間で、目の前で顔から血を流す女性がこちらを振り返ったのだ。さすがに焦って後退りしてしまった。正直言って悲鳴を上げてしまいそうになったのだが、心の中で一瞬、ひぇーーっ!と悲鳴を上げたあと、「だ、だ、大丈夫ですか!?」と言えた自分がすごい。ついに、とうとう自分の目の前に悪魔、いや悪霊に取り憑かれた女が出てしまったのか。イメージで言うと昔ののホラー映画だ、オーメンとかエクソシストとかそんな感じの。そうすると女性は口を手で押さえながら「こ、転んじゃって。。」と言ったので、周りを見るとどうやら友人が施設のスタッフを呼んできたようで、そのまま事務室に連れて行かれた。

その時は少し放心状態になっていたのだが、事務室で応急処置されている女性を見て、人間だよなと確認して教会を後にした。どうも九州旅行の最初に知覧の特攻隊記念館を見てから重いものが脳裏にのし掛かかり、教会でこんなことが起こってしまい、おかしなことが続いたので、さすがに疲れた。大体、この辺りの人は何かを隠しているような気がする。近くの喫茶店でコーヒーを注文して、水のお代わりを貰おうとすると、「うちのお水は美味しいでしょ。普通の水とは違うのよ」と言い何の水なのか聞くと「汲んできた水なのよ、ある場所からね」とニコニコしていたり。一体どこなんだ(笑)

夜に気分を変えようと、ホテルの人の勧めるおでん屋さんに行ってみると、昔ながらの店で、おでんを囲むカウンターが居心地が良い。割烹着のエプロンしている女性は昭和の雰囲気で、居心地も雰囲気も昔のままでいいのだが、その時にはなんだか遠い昔の戦時中時代に迷い戻されてしまった気分になっていた。

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