憂鬱の推移「セルビア ベオグラード2」

成田空港まで車を走らせ20時頃に到着した。フライトは22時なので夕食を食べようとしたが、どこも空港価格と物価高で値段が妙に高い。大して食べたいものもないので吉野家で済ませて歩いていると、ちょうど横になれるスペースがあったのでごろんと寝ていた。仕事帰りなのではっきり言って寝たいのだ。これから深夜便22時間のフライトなんて最初はいいかもしれないが正直地獄だ。

しばらく横になった後、ゲートの方へ向かうとかなりの人数の人だかりだった。コロナ中はそれほど人はいなかったのだが、元に戻ったという以上に増えているように見える。なんだかこういう眺めをみていると嬉しくなってしまう。いよいよ単独で欧州へ行けるのだ。3年半前に行ったジョージアの頃がよみがえる。その旅の続きが始まると思うとコロナ前とコロナ禍の事が頭の中を駆け巡った。整理しないと何故自分がここに存在しているのか分からなくなってしまう。

時間になり機内に入ると、赤いハットを被ったキャビンアテンダントが何人もいる。今回は初めて乗るエミレーツ航空だ。機内はダウンライトで雰囲気が出ており高級感がある。航空券はいつもの金額より1.5倍だろうか、20万円もしてしまったのだが、コロナ禍中行けなかったので買ってしまった。しかもHISで、だ。なんでか分からないがHISのチケットが一番安かったのと、店舗のHISのスタッフがかなり親切で盛り上がってしまった。

飛行機はドバイ経由でセルビアのベオグラードへ向かう。久しぶりの機内はアメニティセットを貰えたり、機内食も美味しく快適な空間だった。席も真ん中の列の通路側を選択してあったので何も問題はない。約10時間のフライトを終えて、ドバイ空港に到着した。機内でははっきり言って爆睡していたのであっという間に到着してしまった。

現地時刻で朝の5時頃だったので、とりあえずコーヒーを飲みにいく。注文すると日本円で800円ほどで水も買おうとすると、こちらも800円。おかしいと思い、水は諦めしばらくカフェでのんびりしていたのだが、周りを散策して、円安と物価高の洗礼を直に受けることとなった。クロワッサン一つが800円、ハイネケンのビール2000円、キリンビールだと2800円、おいおい、どうなっているんだこれは?と驚き、友人にLINEを送り、みんなでインフレ円安について「やべー」と盛り上がてしまった。ハンバーガーショップなんてセットで注文すると普通に5000円くらいぶっ飛んでしまう。

高級店が立ち並び、多くのインド人が働き、水も買えない自分のような日本人が路頭に迷うSFになりそうな雰囲気の中、朝9時発のベオグラード行きのゲートへ向かう。飛行機までバスで向かい降りると真夏日の陽気。遠くにドバイのビル群が見える。気温は35度。ここからベオグラードまであと6時間だ。

憂鬱の推移「セルビア ベオグラード 1」

10月中旬を過ぎて秋のはずなのが今年は夏が終わらず気温も高く9月の陽気の中、セルビアのベオグラードへ向かうこととなった。旅へ向かうとなれば本来、気持ちも高揚しているはずなのだが、それは憂鬱な気持ちでの出発となった。

今年はいい歳になった親が施設に入るかどうか検討してはいたのだが、ちょうどこの時に体調を壊してしまい緊急で入院となった。今回の旅は母親が入院してすぐの出発になってしまい非常に慌ただしく、そして疲れのせいか自分の体調もあまり優れない状態であった。疲労と背中の痛みがあったため出発の3日前に整体で施術をしてもらい、コンディションを整えながら、なんとか向かえそうな状態にした。しかし、到着してから大丈夫なのだろうか、などと不安も感じたがここまでくれば行くしかないし、悪いことが起こるかどうかなんて分からないと腹に決め、仕事を夕方に終えて空港へ向かい夜22:00発のフライトに乗り込んだ。時間がなく旅先の下調べはあまりできてはいない。

今回なぜセルビアにしたのかというと、このインフレと円安、そしてオーバーツーリズムの問題を考えると、行くべきではない国が多数出てきた。スペイン、ギリシャ、クロアチアなどは観光客が押し寄せてきており、観光場所にも規制がかかっている。そして夏場は暑くて観光どころではない。

3年ぶりなので、とにかくヨーロッパへ行きたかった。理由はただそれだけなのだが、特にロンドン。ロンドンは2度、一度は短期留学もしていた為、ロンドンに戻り気持ちを整理したかった。しかし、このインフレと円安の状態で到着してからの滞在費を考えると諦めざるをえなかった。ホテルだけでも1泊3万円前後からなのだ。楽しめるはずがない。そのような状態でヨーロッパで気軽に滞在できる場所はないのだろうかと調べていると、アルバニアという国が候補に挙がってきた。

そう、バルカン半島にある国々や東ヨーロッパは物価は安い。以前行った時もクロアチアやチェコなど物価がかなり安かったという記憶がある。そこから色々なプランを考え、

ギリシャからアルバニア→ボスニアヘルツェゴビア→セルビア→ブルガリア→トルコ。

こういったプランを考えたのだが、10日間しかないのだ、さすがに無理だ。アルバニアやボスニアヘルツェゴビナに行こうとすると交通の便が多くはないようなので、今回残念ながら見送り、足早に移動する旅は控えてじっくりと1,2か国に滞在することに決めた。

バルカン半島には昔、ユーゴスラビアという国があった。独立戦争による内戦で国は解体されてしまったが、そのユーゴスラビアの首都がセルビアのベオグラードなのである。そして隣国にあるハンガリー。第一次大戦はオーストリア、ハンガリー帝国の皇太子がサラエボで撃たれたことから始まったとされるが、セルビアの豚肉の関税問題でオーストリア、ハンガリー帝国と揉めたことも一因とも書いてあった。EUに所属していないセルビアと対照的なハンガリー。その二か国を見て回ることにした。

友人にセルビアのベオグラードってどうかな?とメールすると、「昔行きましたよ。街は退廃感MAXですね!(笑)」と返ってきた。ベオグラード行きはこの退廃感という言葉を聞いたことによって決めたようなものだ。

3年半ぶりの海外は台湾へ 6(最終話)

数時間だけ寝て、起きて朝9時頃になんとか集合場所のホテルのエントランスにヘロヘロで向かう。さすがに疲れた。O君は早朝に帰ってきたのに早朝に九分へ一人で出発してしまったらしい。今日は帰国するので午前中しか自由な時間がないため、残った3人は龍山寺へ向かう。地下鉄を乗り継ぎ寺へ向かう途中で朝食を食べようと思ったのだが、時間帯が早い為マクドナルドしか見当たらず、妙に混んでいる冷房が効いた店内でハンバーガーを食べる。中国語が飛び交う朝の台湾はなんとも落ち着く。

龍山寺に到着すると日差しが強くなっておりかなり暑い。O君から無事に九分に着いたと連絡があり、こちらは龍山寺を観覧する。この暑さなのに拝観者は多くみな念仏を唱えている。寺は中国にはよくあるような寺であったのでさっと見歩いて終わってしまった。それからは特にすることもなく、3人は空港へ向かわないとならないので、デパ地下の飲食店で小籠包と牛肉麺を食べる。フライトは15時頃なのだが、O君だけは20時のフライトなので九分でしばらく遊んでいるのだろう。空港への列車へ乗り、もう遊ぶだけ遊んで満足なので、3人ともいい具合に遊び疲れた表情でつり革を掴んで窓の外の景色を見ていた。空港に到着して、それじゃまた東京でとK君と別れた。

自分ともう一人が空港で土産を買おうと物色していると、やはり空港価格、そこに円安も絡んできたので、どれも高い。とはいえ久しぶりの海外なのでパイナップルケーキを買っていく。今年の5月にコロナが5類になったばかりなので海外へ行く人はまだ多くない。土産だけでも海外からの物が渡されればパンデミックも終わりになったのだと実感しやすいだろう。フライトの出発時刻までの時間、アイスコーヒーを飲みながら寛ぐ。こういった時間さえも3年ぶりなので、自分の過去と現在が絡みあい不思議と気持ち良さでいっぱいになる。

自分は3年前に何を目指しどこへ向かっていたのだろうか。突然パンデミックにより生活が中断されてしまい、その中断が3年以上にも及んだのだ。意識が不明瞭になっていたことがここに来て分かってきたような感じだった。様々なことがフラッシュバックしてくる。空港から外を見ると飛行機が滑走路を走っている。数年前はこの景色を南米や欧米で見てたりしていたのだが、まだまだそこは遠い昔の場所ような感じさえもする。

年内に10日間の休暇が取れるのだが、どこへ行ってみようか、遠い場所には果たして行くことができるのだろうか。まだこの時、欧米などはパンデミックによる三年の月日による壁があり、とにかく遠いという印象であった。

3年半ぶりの海外は台湾へ 5

時刻は16時。全員、ホテルの部屋で各自休息をとっている。台北に来てから2日目、動きっぱなしなので時々休憩を入れながら行動をしている。そして今夜は夜市場へ行くことになっている。その前に午前中に飲んだ高山茶が美味しすぎたので、茶器の専門店に行くことにした。

エントランスでみんなと待ち合わせ、ホテルから茶器店までUberで向かい、洒落た店内の茶器を端から端まで見渡し、なんとか4000円程度の見合った急須と湯呑のセットを購入。買ったのは自分だけだったが、帰国後、茶器が欲しいと他の面々は呟いていた。日も沈み始めていて、あまり時間もないのでそこから街へ出るとその周辺は飲食店が並ぶ信義区エリアで念願のマンゴーかき氷を食べることができた。これがなかなか巨大なマンゴーで新鮮でかなり美味しかった。南国で夕暮れ時にマンゴーを食べられることがあまりにも幸せすぎるのだが、これだけに終わらず、ここから夜市へ向かう。ちなみ店の名前は思募昔(スムージー)本館。

向かった先は臨江街夜市。かなり賑わっているがあまり観光客はおらず、台湾人が多いローカルな夜市らしい。出店の料理はなかなか手を出しづらいそれが何なのよく分からないメニューが多いのであるが、台南料理の屋台があったのでそこで牛肉麺と豚肉のロースのようなものをつまみながらビールを呑む。美味い。昨日の高級店の味からするとやはり台湾のローカル店のほうが格別だ。

もう一軒、K君オススメの小籠包の店があるということで向かっていった。裏道の小道を歩いていき、本当にこんなところにあるのか、というようなところに入口だけ妙に明るいその店があった。周りが暗いから店だけ明るく目立っているのだが、入口で店員が何人かで忙しそうに小籠包を包んでいる。列ができていたのでしばらく並んでいたのだが、どうしてこんなに夏の台湾、中国、香港などの夜は気持ちが良いのだろうか。以前行った時の夏の香港や上海の夜の空気を思い出せずにいられない。この感覚はどうしようもなく自分に染み込んでしまったようで、夏になるともうどうしようもなくこの湿度と気温の中に溶け込んでみたくなってしまうのだ。

店の中に入れるとカウンターに通された。店内は広くはなく、長居するような店ではなかった。出された小籠包を一口食べて、みんなで悲鳴をあげ、ここが今回の台北で一番美味しい店に認定された。こんなに美味い小籠包は食べたことがない。何というか小籠包が生きてるようにぷりぷりしていて、熱々でやられてしまった。店の名前は「正好、鮮肉小籠湯包」来れるものならまた次回来てみたい。

そこからまたしばらく歩き今度は適当に牛肉麺の店に入る。牛肉麺を食べ終えた僕等は一度ホテルに戻る。ここからは自由行動になるのだが、O君が昨日行けなかったクラブに行きたいと昨日と同じ球技場エリアへ向かってみた。K君はサウナへ行くということでクラブへは3人で行ったのだが、時間は23時の土曜。やはり金曜の夜よりはまだ客が集まっていない。

場所を変えようかともう一件、他の場所で目当てのクラブがあったのでそちらへ向かうことにした。Uberで向かったのだが違う場所で降ろされ、なかなか場所が見当たらす、歩きながら探すとFitness Centre という看板のところに人が並んでおり並んでみるとそこがPawnshopという海外からもDJが来てプレイするところだった。中に入ると今までの夜市の雰囲気はとはガラッと変わり東京、海外のクラブにいるような雰囲気でかなり盛り上がってる。酒を呑みながらテクノミニマルの選曲で気持ち良く揺れていた。だが深夜2時を回っても目玉のフランスからのDJが出ない為、椅子で思わず寝てしまった。O君は明日、一人で九分へ行くということで遅くならないようにホテルへ戻ることにした。

外に出ると台湾の女の子二人から日本人ですか??と声をかけられ、しばらく話す。日本語は自分で勉強しているそうでかなり流暢であった。台北に来てから日本語を勉強している人が多いがそれほど日本に対して憧れのようなものがあるのだろうか。そこに男の子も来て電気グルーヴが好きなんです、なんてことを言われて盛り上がっていたのだが、もう眠すぎてUberを拾いホテルへ帰宅した。時刻は午前3時を過ぎていた。