昨晩はオペラの公演日を一日間違えてしまい、ホテルに戻って疲れてそのままダラダラして寝てしまった。ぐっすり寝れたので朝は良く起きられ、考えるとセルビアに到着後は動きっぱなしで、もうこの旅も後半なのでこの辺で一息入れたいところだ。大体の観光地は昨日回ったので、今日は王宮方面に行って軽く散策するくらいしか予定はないので一日のんびり回ることにした。天気は曇りで雨が少しぱらついている。ホテルで傘を借りて、朝食を食べに適当にイシュトヴァーン大聖堂方面に歩いていく。大聖堂の眺めは気持ちが良く、朝一の散歩には最高の場所で辺りには鐘が鳴り響いている。目の前にカフェがあったのでそこで食べることにした。
ぱらつく雨が降るのを眺めながら、カフェのテラスでハムとチーズのパイ生地で包んだものを食べながらコーヒーを飲む。気温は雨も降っているのでそれほど高くはなく、少し肌寒い中上着を羽織って外で食べていた。今日は日曜日なので、教会でミサをやっているはずだと大聖堂へ来てみたのだが、入口で観光客は午後から入場できると断られてしまった。しかし、中に入っていく信者の人達がいるので、試しにミサへ来たと話してみる。入口の男性はうーんと頷きながらも入れと扉を指さし、中に入ることができた。ミサの間は建築物の見学ができないということのようだ。自分はミサが見たかったので入ってみたが、やはり欧州のミサは熱心な信者が集まり、牧師が話をしている厳粛な雰囲気で日曜の朝に訪れると気分も落ちつく。ミサの途中で外に出ると空は晴れていた。
ホテルが近いので受付に傘を返却して王宮へ向かう。街は小春日和で沢山の人が鎖橋を渡り王宮へ歩いていた。王宮は丘の上にあり、ケーブルカーで一気に上に上がれるのだがトイレに行きたくなりトイレを探すがなかなか見つからない。ヨーロッパは何故にこんなにもトイレがないのだろうか。グーグルマップで見つけてやっとトイレを済まし、歩いていると自転車に乗ったイギリス人から話かけられ、この階段を上がると王宮ですか?と聞かれたのでそうだけど自転車で上がるの?と言うと、持って上がるらしい。先日東京にも来たようで少し話をする。こういう観光地での会話は本当に久しぶりで寝ぼけていた頭が目覚めてくる。
ケーブルカーで上まで上がると、ドナウ川を見下ろす絶景が見えてきた。空は少し曇り空だが、国会議事堂や市街地を流れるドナウ川は格別でみんな写真を撮っていた。こんなところに住めれば楽しいのだが。王宮は国立美術館になっており中を見学する。昨日も美術館を周ったので、絵画に溺れる毎日だ。まぁ展示されている絵の詳細を詳しく理解はしていないが、絵画の海に流されることは最高の快楽になる。王宮を出て近隣を散策する。マーチャーシュ教会や漁夫の砦などは人がいっぱいで、時刻は13時だったが昼食を取りたくても人がいっぱいだった。というか、今日こそはフォアグラを食べないと食べずに帰国してしまいそうなので何とかせねば、と店を調べる。閑静な中世の住宅街を歩き、そういえばお薦めの高級ホテルはこの辺りに何軒かあるのを思い出した。女性が好きそうであろう古風でラグジュアリーな内装だったが、場所がこの辺りだと近くに店はあまりない。夜も静かになってしまうだろうが、まぁそれもそれで中世の気分を味わうにはいいのだろう。
時間がないので鎖橋を渡り、大聖堂の方面に向かう。あの辺にはレストランが何軒も立ち並んでいるので、その辺でフォアグラを探してみることにすると、Strudel Houseというフォアグラを提供している店を見つけた。スタッフに声をかけると中は客がいっぱいでテラス席を案内された。メニューを見るとRoasted Leg of DuckとGrilled Foie Grasと書かれており、これがリアルなフォアグラだとGrilled Foie Grasを薦められたので、それを注文してみた。やっとFoie Grasとメニューに書かれていたので気持ちも落ち着いてきた。運ばれてきたフォアグラは3切れ、焼き林檎が添えてあり香ばしい香りがして美味しそうだ。しかも結構腹も減っていた。フォアグラを一口食べると口の中でトロトロ解けていき、油とソースの味が染みわたっていく。そこに焼いた林檎を食べると脂身と林檎が交わるなんとも絶妙な味わいになった。感動してナイフとフォークで切り刻んで食べていく、が、さすがに3切れもあるとかなり多い。腹が減っていなければ完食するのは厳しいかもしれない。全て食べ終えるとさすがに少し胸やけしたが、ブダペストでやりたいことが一つずつ消化されていき、満足感と安心感に満ち足りていく。
一度ホテルに戻り休憩してからまた街を散策に行くと、通りすがりにSzimpla Kertという廃墟BARを見つけた。見た目が確かに廃墟で中にはカフェが何軒もありミラーボールがぶら下がっていた。昼間だが人は何人か訪れており、開放的な空間のようだ。まぁここは夜にでも来られたら来てみようとその場を後にして、コーヒーでも飲もうと近くに有名な世界一美しいカフェなどと謳われているニューヨークカフェに行くとエントランスでかなりの行列ができていたので諦めて戻ることにした。どこかにカフェはないかと探しているとちょうどいい大きさのカフェがあったのでそこでしばらくゆっくりする。今晩はオペラ座でバレエの予定があり、それまではのんびりしようと思ってカフェに来てみたのだが雰囲気が良くてワイングラスを傾けている客が多い。今日は日曜日で明日はハンガリーの記念日なのでみんな寛いでいるのだろう。
時間は17時前で近くに恐怖の館という博物館があったので行ってみた。エントランスでスタッフの女性が閉館時刻は18時だから無理だと言うので、急いで見るからと伝えると、不機嫌そうな顔でチケットを渡してくれた。大体ハンガリーの歴史を良く知らないし、ハンガリー語も理解できないので1時間もあれば回れるだろうと中に入ると大きな戦車があり、ナチス下にあった大戦中のハンガリーの写真や制服などが展示されていた、当時の生活風景も見られて、日本の沖縄で見た博物館を思い出した。結局、旅に出て博物館を訪問すると、そこにあるものは今も昔も戦争のことばかりになってしまう。地下には当時の牢獄が再現されており、どこへ行っても昔はこんな牢獄が作られていて窓は小さくてほんの少しの陽が差すだけだった。少し館内にいただけで早く外に出たくなってきたところで閉館のアナウンスが流れたので出ることにした。ホテルに戻る途中、自分の写真でも撮ってもらおうと近くにいた人にお願いして撮ってもらう。考えると海外にいるときの写真というものは、あまり持っていないのだ。ブダペストの街並みを背景にした、なかなか珍しい自分の写真を見ながらホテルに戻った。オペラ座のバレエ公演は19時からの開演だ。