憂鬱の推移「ブダペスト、ハンガリー4」

普通に朝7時過ぎに目覚め、LINEをチェックすると友達から何通かメッセージが届いている。日本は午後13頃なので、友達のテンションの方が高い。株価の話も出ていたが、海外にいると投資情報に追いつくエネルギーがなく、他の事に注がれてしまう。姉からの連絡もあり、母親の身体状態が書かれてあったが、特段に問題はなく、入院中の手続きをしてくれているようだ。その内容も全てを理解するには頭が追い付かず、今日どこへ向かい何をするのか頭の中を整理するだけでいっぱいになった。昨日、長距離バスで移動し街中を歩いたおかげで身体が重く、腰も怠い、こんな状態だとブダペストのホテルにしばらく滞在して帰国などはしたくはなくなってしまう。海外で朝起きてホテルで過ごすこの時がいつものことだが心身を休めてくれて、あぁ、それにしても、時間があるのならしばらくベッドに横になっていたい。

重たい身体を起こし服を着替え、朝食を摂りにラウンジへ向かった。チェックインの時に朝食は含まれていないと言われたのだが、朝食ありで予約をしたつもりだったので、念のためラウンジの受付に行くとやはり含まれておらず、通常のブッフェで20€していたので、外のカフェに行くことにした。

Café Cirkuszというカフェが手ごろで評価も高かったので向かってみた。中は8割方客が入っていて、現地の人から観光客まで朝食を食べていた。注文したのはエッグベネディクト。ほうれん草が挟み込まれて美味いのだが、やはり2個あるとなかなか多い。しばらくマップを見ながら今日の行先を調べてコーヒーを飲んでいた。とりあえずブダペスト1日目なので観光地を回ることにしてまずは中央市場へトラムで向かってみる。市場の中は比較的地味なしかし面積のある建物だった。外は雨がぱらついてきて丁度いいので中を散策することにし、店を見ると大きな赤いパプリカ、フォアグラの缶詰、巨大なサラミがどかっと置いてある。これを買う気にはなれないので、目で追いながら歩いていると朝食を売っていたりしていたので、ここで朝食べ歩きをしても良さそうだ。上の階はレストランも何軒かあり、食べることもできる。フォアグラの店はないか聞いてはみたのだが置いてはいないということ。一体フォアグラはどこで食べられるのだろう?

雨が止んでいたので、ここから歩いて国立博物館へ向かう。街は写真映えする街並みで、黄色いトラムがレトロで昔のヨーロッパへ来たような感覚になり、見ているだけで疲れた身体の鎮痛剤にもなってくれる。旅は心身のアスピリン剤代わりになるのだろうかと聞かれたら、なると言わざるを得なく、やはり旅もカフェインも鎮痛剤も憂いながらも幸せな人生にはある程度必要なのだろうか。

国立博物館は1847年に建設された館内を歩いているだけで気持ちの良い建物で、入るとすぐマリア・テレジアやシシィの肖像画が飾ってあり、その部屋は椅子が散らばって置かれておりなんとも不思議な室内だった。ハンガリーの歴史的な展示物を見て、WORLD PRESS PHOTOというちょうど期間展示の写真展を見る。コロナ禍中とコロナ後のめちゃくちゃになった世界の写真が何枚も展示されていた。まさに今自分もめちゃくちゃになってしまった欧州にいるのだが、おかしな気分だ。それを見終えて、売店でピーチジュースを買い少し休憩した。店員が「桃、桃、」と日本語で喜びながら渡してくれたが、この桃のジュースが濃厚すぎて胃がムカムカした。

そのままトラムで英雄広場近くの西洋美術館へ向かうが、西洋美術館はかなりの行列でしばらく入れる様子はなかった。オンラインチケットであればすぐ入れそうなので、手間だがバーコードを読み取り、なんとなく携帯を操作すると購入するとできた。すぐに中に入るとルノワール展を開催しており、なんだか世界中どこへ行ってもルノワールの絵だらけだなと思いながら、しかし近代画は嫌いでもないのでゆっくり流し目で見る。ここはスペイン美術のコレクションが多くエルグレコの絵などが展示してある。まぁなんでも良いのだが、これだけの数の絵を数時間かけて見て回ることができるのは本当に久しぶりで、国内にいるだけの生活が退屈でもあり、しかしこの数年間には意味もあったこともあり、過去と今が交差してくる。大きな窓の外を眺めると晴れ間が出ていた。

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