憂鬱の推移「ブダペスト、ハンガリー7」

ホテルの部屋で黒のスーツに着替え、白いシャツを合わせた。スーツと言ってもカジュアルなセットアップなので本来のスーツではない。それにしても、この歳になるとセットアップの着替えを持ってきているとどこでも入りやすくて便利だ。革靴も持ってきていてたまに履くかと思っていたのだが、結局はこの時以外はスニーカーで通してしまった。とにかく歩く旅の最中はスニーカーでないとやはり厳しいものだ。

会場に到着するとドレスアップした婦人の方々が沢山いて、さすがに目を奪われてしまう。これだけドレスを纏った女性を見る機会はめったになく、オペラ座に来たのは10年前のウィーンの国立劇場以来だ。客席に向かいホールの扉を開けると大きな天井画とボックス席が上まで伸びていて、なんとも久しぶりの雰囲気に圧倒されて楽しくなってきた。事前にチケットは取っていて、前から5列目で20000円弱だったので安い物だろう。席に座るとステージには赤い重厚な垂れ幕がかかっており、オーケストラがチューニングしている音が聴こえてくる。せっかくなので席に座っている自分を撮影してもらってしまい、これも相当珍しい写真になった。

バレエのお題はスパルタクス。古代ローマでの奴隷が反乱を起こす話なのだが、女性のバレエダンサーの動きが飛んだり回ったりと初めて見たバレエだったが飽きずに楽しくみることができた。休憩時間になり、これも久しぶりなので楽しく過ごしたが、スパークリングワインをもらいバルコニーに出てみると、ライトアップされた街の建物が鮮やかに輝いており、秋の夜風が気持ちよく、人々はみな気持ちよさそうに酔っていた。もうこの状態だけで満足なのだが、後編を見て帰り際に写真をお願いされ撮ったりしながら館内を散策しホテルに帰宅した。時刻は22時前で夕食を食べておらず腹が減っていたので、着替えて廃墟BARの歓楽街方面に散策に行ってみることにした。ヨーロッパに来て4,5日経って調子が出てきた。

廃墟BARの手前にフードコートを見つけて中に入ると色々な店があり、ハンバーガーショップがあったので注文してテーブルで待っていると大きな声で呼ばれて、フレンドリーな店員に大きなハンバーガーを渡された。そのハンバーガーを食べると、こっちにきてから一番美味しい料理ではないのだろうか、というくらい美味しく感じてしまった。考えたら朝のエッグサンドと昼のフォアグラしか食べていないのだ。やっと実のつまった肉を食べることができて満足し、店を後にして隣の廃墟BARに入ろうとすると、とくにエントランスチェックもなく素通りで入ることができた。中は結構な人が入っていて大音量の下踊っている。さっきまでお堅いオペラ座にいたので、肩の力を抜いて奥へと歩いていく。ビールを飲みながら中を散策して、DJの近くで音楽を聴いていたが、ちょっと都会ではない地方のクラブでありそうな選曲のようであった。90年代のヒップホップが交じりながらハウスがかかったりと、週末遊びに来た大多数の人が楽しく踊れるのであろう選曲、悪くない。と思っていたらチャイニーズ?声を掛けられ、日本人だと言うとトンコツトンコツ!と肩を組まれ一緒にジャンプするはめになった。そろそろ帰ろうと外へ出ると長蛇の列。時間はちょうど0時を回るころだったので、盛り上がるのはこれからのようだ。

さすがに明日もあるのでホテルの方面へ歩いていくと、繁華街の通りにぶち当たった。中を歩いていると、貸し切りで踊っているようなBARでみんな酔っぱらっている。あきらかに悪そうな連中も前から歩いてくるので、話しかけられないことを祈りながら前へ進むと人だかりのBARがあった。覗いてみるとポールダンスをしている女性が客からチップを貰っている。BARに入らず外から眺めている男性が入口を囲んでいて、中から大音量の音楽が聞こえてくる。これも楽しそうではあったが、もう深夜13時になってしまいそうなので帰ろうとすると、カラオケバーがあり、中を覗くとみんながBON JOVIを大熱唱していて自分も中に入ってみんなで熱唱してしまった。歌い終わったあと、Good Night!と肩を叩かれみんな満足気に帰っていった。一体何の集まりだったのだろうか(笑)

観光客や地元の人々が集まる猥雑な通りを後にするのは少し残念だったがさすがに眠らないとならないのでホテルへ戻ることにした。この時点で日本に戻り日常の生活に戻ることなど想像もしたくなかったし、頭の片隅にもなくなっていた。東欧の夜は力の向け具合が丁度良い。

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