レンタカーを借りる手続きが終わり、とりあえずホテルがある方向へ車を走らせる。とにかく電柱と電線、サトウキビ畑しかなく真っ直ぐ進むのみ。ホテルは中心地(石垣島の南方)の離島ターミナルのすぐ近くにある。14時をまわっていたが、昼食を食べてなかったのでどこかで食べたいが何もない。伊藤忠が進出しているのかファミリーマートだけは時折発見する。
中心地のような街並みが見えてきてすぐ船のターミナルへ向かう。今回の目的地である波照間島への運行状況を調べるためだ。駐車場に車を停め安栄観光というフェリー会社へ行くと色々な行先のフェリーの運航状況が電光掲示板に表示されており、波照間島は「×欠航」と書いてあった。明日の状況はどうか聞いてみると当日の朝6時頃にはっきりするということ。今日は夕方近くになっているので、明日また来ることにして、ホテルにチェックインして遅い昼食を食べにいくことにした。
ホテルはWBFというそれほど宿泊費の高くはない素泊まりするにはちょうど良いホテル。しかし室内にはベッドが3つもあった。窓からの眺めは寂れた港町、すこし南米の街並みにも見えた。昼食を食べようと思ったが、すでに15時をまわっていて店は閉まっている。そして石垣島の街並みは先日行った金沢を歩いた自分には少し朽ち果てたような商店街に見えた。とはいえ港町だ。結局だんだんに、この雰囲気が好きになっていく。
至る所に居酒屋があるが、大きな看板に「八重山そば」と書いてある店が営業していたので入ってみると、ものすごい数の来店した人の名刺が壁に貼ってあった。そこで食べた八重山そばは非常にあっさりした薄味でもコクのある美味しいそばで、店主が色々と話しをしてくれた。石垣島の物価は非常に高く、家賃も相当で東京と変わらない。移住したい人も多いが、不便なことも多くインターネットで何かを買うにしても離れ島への特別な送料がかかってしまう。そして、「内地」という言葉を使っていた。ここで初めて「内地」という言葉を聞いた。沖縄の人たちは本州のことを内地と呼ぶ。同じ日本国内でありながら、やはり差別的な言い方にも聞こえるが、まだ到着したばかりでその島の人々の意思のようなものはよく分からなかったが、優しいものではなかったと思う。
店を出て街中をぶらぶら歩くが、やはり港町だ、少し変わった建物やビル、居酒屋があちこちにあり、あとは土産物屋だ。考えたら何もない南の島へ行こうと南下してきたのだから都会があるわけがない。
石垣島へ来ようと思ったのは、10年ほど前に知り合いから「国内だと石垣島もいいんですよ、何もなくて。ただ砂浜で寝ているだけでいい。星空はものすごい綺麗だし。」と聞いていたのでずっと頭の片隅にはあった。その人が来た時は今よりもっと何もなかったのだろう。
何もないということ。何もないからこそ、そこに価値があるように思い日本最南端の島である波照間島へ行こうと思った。おそらく波照間島にはあまり人が足を踏み入れていない昔の石垣島のような光景が残っているはずだ。
ホテルに一旦戻り少し休んでから夜また街に繰り出す。だんだんと居酒屋が開店し始めて人も出てきた。島料理と看板が出ていた店に入り、海ブドウ、ゴーヤチャンプルー、グルクンの唐揚げ、オリオンビールを注文した。久しぶりの沖縄料理でどれも美味い。これからの夕食が一週間の間、一人居酒屋になる。ホテルへ戻り明日のプランを考え、波照間行きのフェリーが運航すれば予定通り波照間島。運航しなければ石垣島を車で一周することに決めて就寝。予定は明日の朝に分かる。