長崎で泊るホテルはヒルトンにした。旅行割が使えるので、長崎に行く直前にこのくらいのグレードでもいっかと他に予約していたところをキャンセルしてこっちに予約をし直してたのだが、部屋に入ると室内は海外のホテルのようにめちゃくちゃ広い。一人で泊るには本当に広すぎる、国内だと過去最高の広さかもしれない。もう普通のホテルには泊まれないのではないだろうか、トラウマになりそうだ。
半分冗談で泊まっているのだけど、スタッフはアットホームな人達で非常に親切。ホテルから新しくなった長崎駅を通り飲み屋街の方へ行くと路面電車が何本も走っていて歩道橋から見える電車群は異国的な雰囲気を醸し出す。ホテルスタッフから教えてもらった登利亭という居酒屋へ行くと、長崎郷土料理のハトシと地鶏のタタキを勧められた。食べてると隣の席にいた工事現場の監督さんに絡まれて勢いよく呑んでしまった。扉を開けて店に入った瞬間こっちを見たんで、あーこれ絡まれそうだとは思ったんだが、案の定「お兄さん、旅行?」と声をかけられ一緒に飲むことになった。おじさんは工事現場を全国的に回っているようで、これ食べてみてと”なめろう”をくれた。美味しいだろ?日本酒に合うから。とつまんで飲んでたら酔いが一気に回ってしまいおじさんが先に店を出た後に自分も店を出て、間接照明に照らされているような街中をぶらぶら歩き、そのままヒルトンホテルに着いて、ラウンジを覗いてみたらカクテルが美味しそうなので、また呑んでしまった。本当に酔ってしまい、頭がぐるぐる回り部屋に戻りベッドに倒れたが、夜景の眺めも良い部屋は広すぎるし設備は新しいしですぐ寝るのも勿体なく、だらだらテレビを見ていた。
次の日の朝は結構な二日酔いで起きたくないのに7時に起きて年配の団体旅行者が多く寛いでいるラウンジで速攻で朝食を食べて予約していた軍艦島フェリーツアーに参加する。車を飛ばして港に着くとかなりの人が並んでいて半分は修学旅行生だった。船内に乗り込むとアナウンスで「今日は波の高さが6cm近くあります。5cm以下でないと島への上陸はできません」と話している。パンフレットには年間100日程度しか上陸はできなくほとんどが船から眺める周遊になってしまうと書いてあって、まぁそんなもんかと諦めてた。しかし上陸できないと何度も話しをているのにも関わらず、上陸してからの注意事項を幾度も話すので、なんだか期待させるようなことばかり言ってるなと思ってると、島の近くになった時、「みなさん、波の高さが4.9cmになりました!上陸します!」と言い放った。ホンマかいな!(笑)修学旅行生がいるから上陸しちゃうんじゃないのコレ。みんな最初からこうなることは先生から聞いてるから知ってたような顔をしていて喜んでもいない。
というわけで自分は喜んで上陸すると、コンクリートと朽ちた廃墟の群れ。重い雰囲気かと思っていたら元気な爺さんがガイドをしていて、もうあの建物は余命半年ですとか、もう補修することもできないから、わっはっは。と話していた。神社、学校、マンションとこんな小さな島に密集して作られている。当時の人口密度は東京の9倍。驚いたのは丘の上にある巨大な貯水槽。海底に水道管を作ったようなことを言っていた。たしかに相当な人口がいたから、それくらいの貯水槽がないとこの端島の人たちは炭鉱で汚れた身体を洗うのも一苦労だったそうだ。
その後、船に乗り島の周りを周遊したのだが、船から見る島は本当に軍艦のように見えて海に漂っているようだった。この廃墟の軍艦と新幹線が開通した新しい長崎駅やヒルトンホテルが混在している乱雑な街の感覚、交差する路面電車、各所にある教会、出島など何か文化の軸がずれたような街が他の土地にはないものを放っている。
今回の旅はダークツーリズムなのでこの軍艦島はハイライトとしてって、知覧と軍艦島の初日と最後のこれしか行ってねーじゃねぇかと言われるかもしれないけど、あの地獄温泉とかね。地獄とか鬼なんてのはダークツーリズムって部類にも入れていいんだと決めてフェリーの揺れと二日酔いで気持ち悪くなって次の場所へ向かう。