ここからちょっと不思議な話になるのだけど、ちょっと怖いような不思議な話。軍艦島周遊を終えて、この後は出島へ行ったり、グラバー園を見たりしていた(このグラバー園も説明文を読むと三菱の創始者、弥太郎や龍馬の名前が出てきたり、フリーメイソン日本支部の門があったりと面白い)
まぁ、長崎はやっぱり教会が多い。大浦天主堂という古いカトリックの教会も雰囲気が良い。話はその大浦天主堂の近くを歩いていた時のこと、ある看板が目に入って「マリア像、ロザリオ、聖像各種」みたいなことが書いてあってよく読まなかったんだけど、あれ?何かある、と気になって、ここ行ってみようと思い裏道に入ってみた。すると小さな雑貨店があって、あぁ、きっとマリア像とか売ってるんだな、ちょっと覗いてみようと入ると、かなりの数の質の良い聖像やルルドの水が置いてあった。店員は女性が一人座っているだけだったのだが、奥を見ると通路の先に何かがある。古い木の扉が。あれ、なんだろうなぁ。でもちょっと入りたくないな、なんて思ったんだけど、どうしても気になって、店員に「すみません、あの先には何があるんですか?」と聞くと、「資料室ですよ」と言われ、「コルベ神父の資料室、色々な資料が置いてあるの」資料室?いや、扉に資料室とは書いてあるけど資料室ではないよな、と不思議な勘が働いたのだが、恐る恐る「中に入ってもいいんですか?」と聞くとどうぞと言われて、扉のところへ行くと、入室料100円と書いてあったのでそれを支払い扉を開けてみた。
開けると、あぁ、もうこれは資料室ではないよという独特の空気感のような何か感じるものがあって、来ちゃったかなと思いながら周りを見渡すと、中心には大きな柱があって(後で聞くとそれは昔使ってた暖炉だった)壁には写真や絵がたくさん貼ってある。それは神父が拷問を受けている絵や数人の牧師など、かなり昔の物だ。自主出版してたようなクリスチャンの文集も置いてある。こういう何かの気が立ち込めている場所というのに遭遇することは時々あって、今回は鹿児島知覧の特攻隊記念館などは日中暑かったのに、そこは冷んやりしていたり、以前イスラエルに行った時には気が立ち込めていて湿度があり生温かったり、ともすれば冷んやりした教会が何箇所かあった。
今回もそれと同じ感覚を受けたのだが、一人で中で立っていると、店員のおばさんが入ってきた。「ここは何なんですか?」と思わず単刀直入に質問してしまった。そうすると、店員は「ここはね、昔修道院だったのよ、コルベ神父の」あぁ、修道院か。そうじゃなきゃこんな空気にならないよな、資料室ではないし、扉の外からでも気が張り詰めているのが分かった。「あなたはアウシュビッツは分かる?このコルベ神父はアウシュビッツで人の身代わりになって拷問されて殺されたの」絵を見るとナチスに注射を打たれる神父が描かれている。この修道院もそのコルベ神父がポーランドから来日して作られたそうだ。
そのままコルベ神父の話をしばらく聞いているとこう言った「ここには遠藤周作先生やその仲間、巡礼にきた信者の方々も来るのよ、結構混み合ってね。でも、場所が分からなくて見つからなくて来れないって言うの。でもたまにいるのよね、あなたのようにふらっと引き寄せられて来てしまう人が」確かにここには引っ張られる何かがあって店に入って扉を開けてしまったのだが、この真ん中の大きな柱は何ですか?と聞くとこれは実際に使っていた修道院の暖炉なのよ。それを聞いて、写真を撮ってもいいですか?と許可をもらいシャッターを切る瞬間に、「ここはね、夜誰もいないはずなのに、赤ちゃんがパタパタと歩く音がするのよ。なんなのかしらね。でも赤ちゃんの歩く音だから私たちはエンジェルだと思ってるの。みんな怖がるからこの事はあまり言わないけれど」
シャッター切っちゃったじゃーん。。と思いながら、まぁエンジェルなら悪いことはないですよねと言うと「そうなの、そう思ってるわ」と朗らかではあるが目つきの鋭い女性は落ち着いてそう言った。悪い気を感じたわけではなかったのでそれで失礼したのだが、もう一つ起こった出来事がある。