憂鬱の推移「ブダペスト、ハンガリー9」

明日の飛行機で帰国するので今日はブダペスト滞在の最終日になる。ニューヨークカフェを出て歩きながら、今日はもう特に何もすることがないな、と考えながら歩いていたのだが、その日はハンガリーの祝日であり、1956年革命、および共和国宣言記念日ということで街中の施設や店舗は休業するという貼り紙が泊まっているホテルに掲示されていた。では何をすればいいのかな?とホテルの受付の女性に聞くと、「ドナウ川に島があって小さい動物園があってそこがいいかな、できれば自転車を借りて行くと楽しいわ」と教えてくれたので、歩いて島の方向へ向かってみた。島はマルギット島といい地図で見ると確かに動物園が書いてある。

ニューヨークカフェから歩くと結構な距離なのだが、その日も秋晴れの快晴でドナウ川を散歩するのには最高の朝だった。ドナウ川沿いはランニングしている人や犬の散歩をしている人、ベンチに座ってる人、自分も特に何の予定もないのでベンチに座ってドナウ川を眺めていた。憂鬱な旅で始まったのが旅をしていくうちに、だんだんと心身の毒が解けていって身体の内側から回復してきたのがよく分かる。

マルギット島はもう目の前だったのだが、昼になってしまったので予定を変更して行ってみたかったビストロの店にバスで向かう。窓からブダペストの国会議事堂に並ぶ観光客の大行列が見える。本来はせっかく観光に来ている自分もああして並ばないと勿体無いのだが、もうそういうこともどうでもよくなってしまった。予定はないと言っても、行けるのならばセーチェーニ温泉、そこに行くことができればいいかというぐらいだ。

ビストロGerlóczy Kávéházに着いてみると客はみんなテラスで食べている。自分もテラスに座りメニューを見るとランチコースになっていたので、グヤーシュとロッシーニ風、赤ワインを注文した。赤ワインと串に刺さったパンが運ばれてきて、ワインを喉に流し込んだ瞬間、「くああああああああ」と言ってしまい飲みながらガツガツ食べていた。一緒に注文したグヤーシュもパプリカのスパイスがピリっと効いていて全ての料理の混在が素晴らしくて色々なことがどうでもよくなってきた。隣の席にいたインド人らしき紳士から「タバコを吸っても気にしないですか?」と聞かれて、俺は何にも気にしないし、最高に気持ちがいい!タバコを一本貰えるのなら久々に吸ってみたい、などと思いながらこの完璧な状態に酔っていた。

グヤーシュはブダペストに来て1番美味しい味付けでパプリカのスパイスの煮込まれた大きな牛肉が非常に柔らかい。ロッシーニ風のステーキにはフォアグラが添えてあり、やはりフォアグラはステーキの添えくらいが丁度良く、赤ワインとのマリアージュが絶妙であった。もう、腹もいっぱいで歩く気にならなかったのだが、街をぶらつきながらホテルへ戻って温泉の支度をして地下鉄で向かう。

晴れていて15時頃になっていたので温泉に入るには丁度頃合いの良い時だろうと向かってみると、入口で日本円で約5000円の入場料を支払い、中へ行くと遺跡のような建築と露天風呂というかプールに男女達が湯船に浸かって寛いでいる。ロッカールームで海パンに着替えて湯船に浸かると、ぬるい。。こちらのお湯はぬるいのが基本なのだろうか。とはいえ見渡すと雲一つない青空と西洋建築の露天風呂であり、こんなシチュエーションはそうそうなく、旅で歩きすぎた身体もほぐれていった。

室内には何箇所も湯船があり、一つ一つ試しながらお湯に浸かっていた。神殿のような作りの建物で窓は何箇所もあり、天井から日が差し込む空間。やはりアジア人は自分しかいない。旅の最中に温泉に浸かれるということは歳のせいか非常に重要なイベントのひとつになってきた。動いてばかりいるよりも、じっと腰を楚て過ごす時間が今の自分には必要のようだ。外の露天風呂に向かうと、外気は冷たく身体も一気に冷えた。露天風呂に浸かり、そろそろ帰ろうとロッカールームへ向かい、タオルを借りようとすると2000円と言われたので断りTシャツで軽く身体を拭き外に出て地下鉄に乗りこんだ。

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